薬剤師の仕事をしている時に接する99%の患者は普通の人です。
しかし残り1%の中にはとんでもないクレームを吐く患者がいます。
もちろんそれが「ただクレームを言いたいだけ」と頭で分かってはいても、いざ面と向かってあれこれ言われてしまうと自分に自信を失くしてしまう薬剤師も多いのではないでしょうか。
そこで今回はそんな患者がトラウマになってしまった薬剤師の悩みを見て行きたいと思います。もし自分に自信を失くしてしまった薬剤師の方はぜひ参考にしてみてください。
患者に怒鳴られトラウマになった薬剤師Cさん
【年齢】24歳
【職場】薬局
【年収】450万円
【休み】普通
【人間関係】普通
【備考】新人薬剤師
今年薬剤師国家試験に合格し無事に薬剤師として働いている。
そして4月から仕事が始まって半年が経とうとしている。
仕事は覚えることが多くて大変だが、念願の薬剤師になれたので必死に薬の勉強や臨床の勉強を行い、先輩薬剤師にも質問したりして知識を吸収している。
幸いなことに職場の人間関係も良好でまさに理想とする薬剤師のスタートが切れているのではないかと思う。
そんな努力を先輩薬剤師も認めてくれたのか、同期よりも少し早めに服薬指導をやらせてもらえることになった。
自分は口下手で緊張しやすいタイプなので上手くやれるか不安だったが、必死で身に付けた知識をフル活用して何とか服薬指導もこなせるようになってきた。
しかしそんなある日、ある年配の男性が「いつまで待たせるんだ!」と激怒し今にも殴りかかってきそうな勢いで投薬台に迫ってきた。
自分はすみませんと謝ることしかできずに、管理薬剤師が対応してくれて何とか事なきを得たが震える程恐ろしかった。
また悪いことは続き、自分の監査ミスにより患者に薬の規格を間違えて渡してしまい患者が怒鳴り込んで薬局に入ってきた。
これは完全に自分のミスであるため仕方がないが、正直服薬指導するのが恐ろしくて仕方がない。
しかし薬剤師たるもの、人と接することが恐ろしいのであれば仕事にならないのは自分でも良く分かっている。
もう自分は薬剤師が向いていないのではないか。もう薬剤師を辞めたい。
薬局はサービス業である
薬剤師は医療人ですが、その一方でサービス業の側面を持っています。
特に薬局においては門前の薬局が大半を占め、自動的に患者が来てくれる薬局も多いためかそれが災いし、いかに処方箋を早く多くさばくかということに重点を置く薬局も増えています。
また患者も薬局を「病院と提携している薬を貰うだけの場所」という認識の方もまだまだ多く、求めるのは適切な医療よりもスピードを重視する人も多いため、そのニーズに応えた結果、薬剤師の存在意義が薬剤師と患者との間に大きな溝を生んでしまっています。
しかしその溝がどれだけ大きくても人の命に関わる仕事である以上、薬剤師として譲れない部分もある一方でサービス業の側面もあるため、一言で薬局はサービス業ともサービス業でないとも言えません。
ただ病院で数時間待たされて診察は数分。おまけに会計を済ませて終わりではなくさらに処方箋を持って薬局に行きさらに待たされる。おまけに薬局の奥の方ではスタッフがニコニコしているのを見たら、薬局がサービス業云々以上に激怒する人が出てくるのも全く不思議ではありません。
薬局にクレーム患者がいて当たり前
世の中にはクレームを言いたくて仕方ない人が一定数必ず存在します。それはどの分野の仕事にも言えることです。
特に薬局に関しては病院や医師に文句を言えない分、薬局で発散する人がいるのも事実。
また基本的に薬局は元気な人が来る所ではありませんので体調が悪く待つのが億劫な人や、ただでさえ待ち時間の長い病院受診ですから時間に余裕がなくイライラしている人もいるでしょう。
家電の販売のクレームならば「売る前の不満」はほぼ出ることはありませんが、販売してからクレームが出るものです。かたや薬局は薬を渡す前も渡した後もクレームを受けることがあるため、薬局は業種的にクレームを受けやすい職場とも言えます。
しかし新人薬剤師の場合は身に覚えのないことでクレームを受けるなんて夢にも思っていない人も多いのではないでしょうか。しかも面と向かって受けるクレームの恐ろしさは想像以上の衝撃を受けたはずです。
そして今回あなたは立ち直れないくらいのショックを受け、それがトラウマになって自分に自信を無くしている状態です。おそらく安易に「長い薬剤師人生では必ずある事だから自信を持って」と言われても心に響かないのではないでしょうか。
またあなた自身でしか解決できないあなたの心の問題だからこそこんなにも悩んでいると思います。
薬剤師が患者トラウマから脱却する方法
しかしあなた自身でしか解決できない問題ではありますが、努力次第で自分への被害を最小限に抑えることは可能なので紹介します。
まず今どうしてもツライ状況ならば、管理薬剤師に相談して投薬の数を減らしてもらいましょう。事情はおそらく知っていると思いますので、あなたの主張を汲んでくれるかもしれません。
それは難しいという場合はせめてクレームが多い患者は避けてもらうようにお願いしましょう。クレームを言う人は案外固定していますので、ピックアップして対処してみてください。
もしくは事前にクレーム患者と分かっている場合は、最初の一言を考えてみましょう。
たとえば「今日はどうされました?」や「同じ薬が出ていますが調子はどうですか?」などの当たり前の入りから指導を始めると、それが逆鱗に触れる可能性がありますので注意しましょう。
まずは「お待たせしてすみませんでした」と一言必ず添えてください。
あとはクレームが多い患者と仲良くなりましょう。
いくらクレームが多い人でも毎回クレームを言うケースは稀ですから、機嫌がいい時に世間話などをして親しくなっておきましょう。
この時世間話を急に投げかける事は非常に勇気が必要です。きっとあなたは「急に世間話をしてキレられたらどうしよう」と思ってしまうはずです。
ですからこの時の秘訣としてはとにかく「褒めること」を重視してください。
なんでも構いません。顔色でも良いですし、服装でも良いです。身に着けているアクセサリーでもバッグでも構いません。とにかく何でもいいので褒めてみてください。
相手もまさか自分と楽しく会話をしたいとは思っていないと考えているでしょうから、急に世間話をされると間違いなく面喰ってしまいます。
すると急にキレだす前に相手は緩んでしまいます。この時はあなたがクレーマー患者と仲良くなる突破口になりますので、ぜひ一度試してみましょう。
そして最終手段としては2つ。
1つは薬局を辞めて病院に転職しましょう。
一概に病院の方がクレームが少ないとは言い難いですが、基本的に入院している方で薬の指導に来て激怒する人は少数派です。ですから無理に薬局に拘る必要もありませんし薬剤師を辞める必要もありません。
そしてもう1つは法律を盾に取るということです。
もしあなたが受ける事がクレームレベルならばまだしも、あまりにも行き過ぎる患者の場合はクレームを通り越して犯罪にもなり得るので、自分の身を守るためにもこちらの把握も行っておきましょう。
いざ法律を盾にできる事が分かれば気も少しは楽になります。
薬剤師人生におけるクレーム
薬剤師の多くは「当初抱いていた理想とする薬剤師像」が、現場の中でもまれつつ少しずつ形が変わってきます。
今回あなたに起きたことも薬剤師として不幸な事かもしれませんが、これから起こる様々な乗り越えるべき問題の1つ。
そしてあなたの理想の薬剤師像の形を変えるきっかけになったことでしょう。
また、このきっかけは良い事も悪いことも絶対にあなたの薬剤師人生において大切な糧になる事は間違いありません。
ですからそのためにもまずどんな形でも結構です。
今回も何とか乗り越えるための努力をしてみてください。最悪職場が変わっても問題ありません。何事もないように振る舞っても構いません。
そして究極は乗り越えなくてもいいです。
自分に自信などなくて当然ですし、今の環境から抜け出す術をどんな形でもいいので身に付けるようにしましょう。