近々管理薬剤師を任されそうと思ったり、将来的には自分も管理薬剤師になって収入アップしたいと考える人もいるかと思います。
しかし管理薬剤師はその名の通り薬局を管理する薬剤師ですが、具体的な業務や仕事内容をはじめ、年収や残業代などについて本当の所を知らない人も多いですよね。
そこでここでは気になる管理薬剤師について紹介し、そして管理薬剤師と一般薬剤師との違いや管理薬剤師のメリットデメリットも紹介していきます。
「そろそろ管理薬剤師を任されそう」「管理薬剤師は何をすればいいのか」「管理薬剤師になりたくない」と考えている管理薬剤師に興味がある薬剤師の方はぜひ参考にしてみてください。
目次
一般薬剤師と管理薬剤師の業務内容や給料の違い
それではまず管理薬剤師と一般薬剤師の業務や給料違いについて紹介していきます。ここでは
・管理薬剤師の役割
・業務や仕事内容
・年収
に触れていきます。
役割の違いは責任者と監督業務
管理薬剤師の仕事を一言で言えば薬局の責任者と監督業務。
薬剤師の仕事は基本的に「医師」と「患者」の間に「薬」を介して役割を担う仕事ですが、管理薬剤師の場合はその機能にプラスして薬剤師と薬剤師をつなぐ役目を持っています。
実際に法的にも定められており、薬機法第8条によると
薬局の管理者は、保健衛生上支障を生ずるおそれがないように、その薬局に勤務する薬剤師その他の従業者を監督し、その薬局の構造設備及び医薬品その他の物品を管理し、その他その薬局の業務につき、必要な注意をしなければならない。引用:薬機法
と明記されています。つまり管理薬剤師は雰囲気で管理責任を負っている訳ではなく法的な義務があります。
業務の違いは事務的なことが増える
管理薬剤師と一般薬剤師の業務の一番の違いは事務的な業務が増えることになります。
一般的な薬剤師としての調剤や服薬指導などの業務はもちろんですが、それに加えてプラスアルファの業務を課せられます。
例えばスタッフのシフト管理や行政への書類の作成、在庫管理などの管理薬剤師として基本的な業務に加えて、トラブル対応や研修への参加など、職場をマネジメントするための日常業務以外の管理も必要になってきます。
そして働く職場によって必要とされる業務内容も変わっていきます。
以下に例を挙げますと
薬局:患者数・処方箋枚数・1枚当たりの技術料の把握、トラブル対応
病院:医師・コメディカルとの連携や情報共有、薬事委員会の開催
ドラッグストア:OTCの売り上げ評価や調剤併設型は薬局と同じ業務
これらの事が基本的な管理薬剤師の業務とプラスして求められます。
もちろんこれ以外にも管理薬剤師としての名前のない仕事内容も多く存在します。
管理薬剤師の年収は60~100万円ほど高い
管理薬剤師で気になるのが年収ですよね。
管理薬剤師の年収は一体いくらなのか気になる所ですが、これは薬剤師求人サイトのファルマスタッフによると以下の様に公表されています。
調剤薬局・ドラッグストア:平均年収500万円~600万円
小規模薬局:平均年収400万円~700万円
製薬会社・一般企業:平均年収600万円~800万円
これはあくまで目安になりますが、基本的に管理薬剤師はこれらの年収に収まるのがオーソドックスと言えるでしょう。ただ体感だとそれぞれプラス50~100万円ほどではないかと感じます。病院薬剤師が載っていませんがおそらく400~600万円に収束するのではないでしょうか。
では一般薬剤師と管理薬剤師の年収の違いですがおおよそ60~100万円程度になります。
大多数の企業において管理薬剤師と一般薬剤師の年収の差が100万円を超えることもありますが、管理薬剤師の手当てが月5万円前後との所も多いため、年収にすれば約60~100万円アップが妥当です。
もちろん地域差や職場により違いもありますが、おおよその目安として考えてください。
管理薬剤師になる条件
管理薬剤師になる条件は基本的にありません。条件があるとすれば薬剤師免許です。
よく「管理薬剤師には何年目でなれる?」という質問を目にしますが、これをしなければ管理薬剤師になれないという条件はありませんし薬剤師としての勤務年数もありません。
これは例を挙げれば分かりやすいのですが、例えばあなたの含めて薬剤師が2人しかいない薬局で、もしもう1人の薬剤師が辞めた場合はあなたが管理薬剤師をやるしかありませんよね。場合によっては新卒薬剤師も管理薬剤師になる可能性もあります。
ただ個人の調剤薬局などは長年勤めている管理薬剤師がずっと働き続けているケースも少なくありませんので、その場合は永遠に管理薬剤師になれない場合もあります。一方で大手調剤チェーンであれば2~3年で管理薬剤師になるのが一般的です。
ですから管理薬剤師に少しでも早くなりたいのであれば、勤務している薬剤師が流動的な職場か初めから管理薬剤師を募集している職場がいいでしょう。
逆に新卒薬剤師でいきなり管理薬剤師を任される様な職場ははっきり言って要注意です。いわゆる適材適所ができないくらい人手不足な職場ともいえますので、通常はそれなりに薬剤師経験があり知識も備わった段階で管理薬剤師に抜擢されるのが基本となります。
一般薬剤師にはない管理薬剤師のデメリット
ではここからは一般的な薬剤師と管理薬剤師のデメリットを見ていきたいと思います。
管理薬剤師の労働時間は長め
管理薬剤師の労働時間は一般薬剤師職よりも長いのが一般的と言えます。
職場によって異なると言えばそれまでですが、基本的に残業も当たり前と言っても過言ではありません。
と言うのも管理薬剤師は一般薬剤師と比べて通常業務プラスアルファの部分が多く、また全体の業務が終了していないと始まらない業務もあるため(処方箋枚数のチェックや在庫確認等)必然的に一般薬剤師よりも労働時間は長くなりがちです。
管理薬剤師は残業代がない事が多い
では残業するのが当たり前の管理薬剤師ですが残業代は基本的に支給されない所がほとんどです。ただし一方で残業代を貰っている管理薬剤師もいます。
「管理職って残業代が貰えないんじゃないの?」と残業代が出ないのが当たり前と思っている方もいるかもしれませんが、実は管理薬剤師は労働基準法的には一般的な管理者には該当しないんです。
ですから管理薬剤師だからと言って残業代が出ない事は本来ありませんが、現実問題大半の管理薬剤師はあらかじめ管理薬剤師手当を貰っていたり、その分の昇給があったり、みなし残業があったりしてしまう結果残業代を求めないケースも非常に多いです。
時給換算すると給料が大した事がない場合がある
管理薬剤師の場合、業務時間が必然的に長くなりがちです。また急きょ出勤が必要になった場合などは基本的に管理薬剤師が出勤する事になるでしょう。
そして管理薬剤師には残業代が出ない事も多いため、労働時間が長くなってしまう結果、時給に換算すると大して管理薬剤師として給料が上がったわけではなく、単に労働時間が伸びただけであるケースもあります。
管理薬剤師は副業できない
管理薬剤師は副業が禁止されています。
メジャーな例を挙げると薬局の管理薬剤師が他の薬局で仕事を行ったり、公務員薬剤師が薬局で副業をするなどですね(公務員の場合は管理薬剤師に限りません)。これらは法的にも副業禁止になっており、それぞれ薬機法と国家公務員法・地方公務員法によって副業禁止の旨が明記されています。
ではそれら以外のケースの副業はどうなのかと言えば、これは就業規則による所が大きく個々の企業の判断になります。ただ大多数の企業が副業を認めておらず、一方で隠れて副業を行っている管理薬剤師がいるのも事実です。
現在の国の政策として副業解禁の流れになりつつありますので、法に触れない範囲の管理薬剤師の副業は一般的に解禁になる可能性も少なくありません。
一般薬剤師にはない管理薬剤師のメリットは信用
管理薬剤師のメリットとしてよく挙げられる事が薬剤師としてのやりがいと給料になります。
職場の管理者である立場にも関わらず、薬の知識に乏しかったりスタッフをまとめる力がなかったりすると管理薬剤師としての立場がありません。もちろん初めから完璧な管理薬剤師はいませんが、その立場を任される事によって一人の薬剤師としてのスキルアップに繋がります。
また現実的な問題として管理薬剤師は給料が高いです。一般薬剤師の頃の昇給を考えれば一気に跳ね上がると言っても過言ではありません。目に見える評価が難しい薬剤師の仕事において「給料が上がる」というのは紛れもない評価になりますからモチベーションも上がります。
しかしこれらの事は決して全てがプラスに働かないこともあります。
例えば管理薬剤師の立場ゆえにエリアマネージャーと一般薬剤師の板挟み状態に苦しんだり、自分の時間が満足に取れなくなることもあります。管理薬剤師になる事が絶対のメリットかと言えば決してそんなことはありません。

ただ揺るぎない管理薬剤師の一番のメリットは「信用」です。
そしてその信用はそのまま薬剤師としての市場価値に直結します。
例えば薬剤師の募集要項を見てもらえば分かると思いますが、管理薬剤師であれば一般薬剤師が応募できない管理薬剤師募集にも応募できますし、なにより転職先の企業からも期待の度合いが異なります。
おまけに年収もスタートの段階で100万円以上高い事も珍しいことではありません。
これは薬剤師のスキルを図るモノサシとして「管理者経験あり」という信用ほど明確なものがないためです。
ですからもし自分の薬剤師としての市場価値をあげたい、転職する際に少しでもいい条件に転職したいと考えるならば、ぜひ管理薬剤師を目指すようにしましょう。現状認定資格よりも管理薬剤師の市場価値は高いです。