4月30日に成立した補正予算で薬局においても「電話や情報通信機器による服薬指導等を行った患者に対して薬局が薬剤を配送等する費用を支援する」とされ約4億6千万円が措置されました。
しかし蓋を開けてみるとホントお粗末な支援になっています。
また配送方法に関しては
患者が希望する薬局に対して依頼することを踏まえ、また予 算には限りがあることからも、薬局の従事者が直接届けることを基本とし、それが困難な場合に限り、配送業者を使用する方法を検討するものとする。薬局における薬剤交付支援事業の実施に関する留意点等について
おまけに日薬は薬局における患者への案内内容(例) として
薬の配送料は、通常は患者さんのご負担ですが、新型コロナウイルス感染症の対策として、期間限定で、国からその費用が補助されることとなりました。薬局における薬剤交付支援事業の実施に当たっての留意点(その 4)
と提案しています。
これはつまり
薬局にも予算が出たので薬の配送の支援を行います。基本は薬局の人間がリスクと手間をかけて薬を届けてください。なるべく配送業者を使うのはやめてくださいね。でも安心してください。300円差し上げますから。さあ患者さんに200円で済むと教えてあげてください。CoVで療養中の人はタダでOKです。ただ予算の上限に達したらやめます。
と言う事です。これはあんまりでしょう。
ただ擁護するわけではありませんが当初は薬の配送にかかる負担は当然全額自己負担だと思っていたはずなんですよね。
はっきり言って個人的にも配送料は全額自己負担で良いと思いますが、緊急事態宣言が出され医療崩壊のリスクが懸念され、少しでも外出を控えてもらうために薬の配送にも補助を出す流れになったのでしょう。
では当初と事情が変わった今、一体どうするべきなのか。
個人的には2つの方法があると考えます。
1つは患者に薬の送料は自己負担になる事をお願いする(電話診療の段階等)、もう1つは薬の配送にもっと予算を増やすという事です。
まず1つの案として電話診療の段階等ではっきり「薬の配送にかかる料金は患者負担です」と周知すること。「診察は電話でOK、でも薬の送料は勿体ないから病院の近くの薬局に取りに行く」これがどれだけ意味がないかを理解して徹底して周知するべきです。
病院での電話診療の初診料は288点から214点に減点になっています。つまり740円分削減されているんです。これをそのまま配送代に回せとは少し乱暴な話しになりますが、柔軟な対応が必要だと思います。はっきり言って現状200円で配送できると公表するのは予算の上限もあるのに非常に中途半端です。また少し話は変わりますが全国一律の薬局で補償が同じである必要もないと思います。
そしてもう1つの案としては予算を増やしてもらうことです。
政府は電話診療解禁の決定の時期は早く、初診から可能とする特例措置ですら4月上旬には決まっていました。そして本来電話診療でも大半の人に処方箋が発行されますから本来ならば薬の配送までフォローすべきなんです。なぜなら電話診療から薬が手に届くまでの間で通常よりも患者負担が増えるのは「薬の配送」と「振込等の費用の支払い」に関してだけなんですから。
本来ならばそこまで考慮して予算を組むべきでしょう。訳の分からない事業に補正予算を組むならば薬局の配送にもっと予算を割いてもいいはずです。
ただこう言うとポジショントークとまず言われますよね。でも「医療従事者に感謝しよう」と連呼されても、きれいごとで薬の配送の自己負担を全員が受け入れてくれるなら苦労はしません。
「いやいや、薬局は医療機関じゃないよ」と言う意見もあるかもしれません。少し前にも「薬局は医療機関か否か」と言う事が物議を醸しました。
個人的にその議論に関心はありませんが、仮にこれだけ医薬分業が進んでいる現状で薬局が機能停止に陥ってしまうと当たり前に医薬品が患者の手に届くことはまず不可能です。薬局から医療崩壊が始まるリスクもあります。
薬の中には業者を使って配送を行えない薬が存在します。
そんな時は薬局の人間が届けるしかありませんが、この状況ではっきり言って300円で薬を薬局の人間が配送すべきと言うのはもはや精神論です。
ではいくらが適切なのかと言われればベストな金額かは分かりませんが、例えば在宅患者訪問薬剤管理指導料は1回6500円(650点)です。これをそのまま適応すべきとは思いませんがいくら何でも1回300円で良しとする人は多分いないでしょう。
「金額の多寡で判断するなんて最低だ」と思う人もいるかもしれませんが、そもそも日本中が院内処方だとしたら「薬の配送は病院のスタッフが行ってください。300円で」とは言わないと思うんです。
と言う事で全然支援になっていない薬局の配送支援ですが、まあ詰まる所これでゴーサインを出すトップに問題があるんですけどね。
見てますか日薬の偉い人達。