コラム

2020年の診療報酬改定での薬剤師への悪影響

 

また議事録が出ていないためあまり突っ込んだ事は言えませんが、薬剤師の対人業務を評価する際に「医師の指示に応じて」と言う文言が話題になっています。

参考:中央社会保険医療協議会 総会(第445回) 議事次第

 

吸入器や簡易懸濁法の指導、そして継続的フォローに関しても医師の指示が必要な事に対して「どうして逐一医師への許可を取る必要があるのか」と不満も多いです。

 

対人業務評価における医師の指示に応じての一番の問題

まあ百歩譲って、現状でもすでに一包化、残薬調整、同成分の先発から先発への変更など理解に苦しむものは多々あります。

また薬の継続的フォローに関してもあれだけ中医協で医師会が「評価するな」と釘をさされていたのにも関わらず、どうやら点数が付きそうなことを考えるとこれらの対人業務を評価する流れの黎明期ならではの問題なのかなあとも思ってしまいます。

 

ただ唯一の問題ですがホントこれです。


新たに吸入器を使用し始める人に対して「それはダメだ」と言う医者はまずいませんよね。

 

逆に「なんで急に吸入指導行う許可を求める電話がかかってくるの?」と思うと同時に「勝手にやってくれればいいのに」と煩わしさを覚える医師が激増する事が容易に想像できます。

 

現状ですらくだらない疑義照会でうんざりしている医師もいる中で、一方的に薬剤師側からの疑義をさらに増やしてしまうと、結果としてまた疑義照会という業務が無駄なものと捉えられる可能性すらあります。

 

もし薬局側が不当に加算をベタ取りする可能性があるならば「新規に限り初回のみ算定可」と言う条件を付ければいいだけの話しでしょう。

 

調剤薬局と医療機関の連携と聞こえはいいけど

当然この加算が今年の4月からスタートすることに対して、医者はほぼ誰も知りません。調剤薬局が病院側の入院基本料の改定をわざわざ見る事はゼロではないかもしれませんがかなり低いと思います。ただ病院の医師が調剤薬局の診療報酬改定の細部を見る可能性はさらに低いでしょう。

つまり現場を見れば薬剤師も医師も待たされる患者もだれも得をしない三方損する取り決めだと思います。

 

今回7つの対人業務が評価される事になりますが、薬局と医療機関の連携が必要なものは7つの内6つに上ります。

 

薬局と医療機関の連携が進む事は歓迎すべき事だと思います。

ただ連携と言えば聞こえはいいですが本当に連携が必要なものとそうでないものを区別しない限り医師の負担はいつまで経っても減る事はありません。

 

今回の中医協でも

「医師等の長時間労働などの厳しい勤務環境を改善する取組の評価」

として医師の負担を減らすための加算が検討されていますが、それでは医師の長時間労働は解消されません。

 

「医者の権限を手放さないため」「薬剤師に権限を増やさないため」がモットーになるのは結構ですが、今は世の中のあらゆる「異常」が可視化されてくる時代です。

医師の働き方なんてもういつ話題の中心に来てもおかしくありません。

 

だからこそ、そろそろ医師会も現場の医師のための事を考えて診療報酬以外の面にもフォローに入るべきなのではないかと思います。なんでも医師の権限を守る事が得策ではないでしょう。

 

調剤薬局も二分化していく

そして薬局に話を戻しますと、今後薬局も二分化してくんだろうなあと感じました。

 

具体的には吸入指導が必要な患者がいつ来てもいいように「事前に近隣の医療機関と連携して疑義照会不要のケースに組み込んでスムーズに行うケース」と「逐一疑義照会を行って患者を待たせ、ほぼ答えの決まっている医師の返答を待つケース」です。

当然後者の方が理想的であり、それを実際に行う薬局も増えると思います。

 

しかし結局それは面分業をメインに行っている薬局からすると難しい話しであり、こうやって面分業を推進しておきながら結局門前薬局が一番効率よく対処できるシステムって矛盾している気がします。

 

という事で前途多難な2020年の診療報酬改定ですが、個人的には今後の議事録の内容と「医師の求めなどに応じて」の「など」の部分の詳細もどうなるか注目していきたいと思います。