薬剤師の知識は人それぞれですが、薬局内の知識があまりにも低いと患者にも迷惑がかかってしまい、管理薬剤師の立場の人は安心して見てられない人も多いのではないでしょうか。
そこで今回は薬局内の知識不足に頭を悩ませている管理薬剤師の悩みを見て行きたいと思います。
どうすれば薬局内の薬剤師が知識を身に着けてくれるのか。
管理薬剤師として何をやるべきかと悩んでいる人はぜひ参考にしてみてください。
目次
知識の差に落胆している薬剤師Sさん
【年齢】32歳
【職場】薬局
【年収】550万円
【休み】普通
【人間関係】問題なし
【備考】管理薬剤師
大学を卒業してからずっと薬局で働いてきた。
自分は4年制卒の薬剤師なので薬剤師歴は10年くらいになる。
比較的勉強する事は嫌いではなかったし、薬剤師として自己研鑽は必要不可欠という考えから自主的に勉強を行ったり、薬剤師会の勉強会なども積極的に参加してきた。
周りと比べても十分知識はある方だと思う。
そして昨年から管理薬剤師を任されているのだが正直周りの薬剤師のレベルの低さに落胆している。
薬に対する知識は薬剤師1~2年目と変わらないレベルで(薬剤師歴は自分より上)、患者への服薬指導は薬情に書いてある様な画一的な事しか話さない。
患者からの質問にもお茶を濁す様な回答ばかりで的確なアドバイスができていない。
自分が他の薬剤師に指導をするのだが、年上のパートの薬剤師などはあからさまに嫌な顔をする。
これでは自分が管理者としての責任を果たしているのと言えるのか自問自答してしまう。
薬剤師の知識レベルの差は大きい
薬剤師の知識レベルの差はピンキリです。
日頃から自己研鑽を欠かさずキャリアを重ね、かなり専門的な知識を持っている薬剤師もいれば、患者を素人だと決めつけ何となくその場を乗り切るための悪い意味での「要領のいい薬剤師」も多く存在します。
また知識の差と言うのは必ずしも年齢に比例しません。
比較的若い薬剤師でも驚くほど勉強し、自分の理想としている薬剤師を目指している人もいれば、ある程度年齢が上であっても全く知識がない薬剤師も存在します。
また薬局の職場ではパートの薬剤師も多い中で、薬局内の立場が必ずしも年功序列ではない所も多く、中にはあなたの様に年齢的に最年長ではなくても薬剤師全員をマネイジメントする立場にたって苦労している人も決して少なくありません。
管理薬剤師が葛藤する2つのこと
薬局内の管理業務を行い薬学的な知識はもちろん、時には人間関係の調整や職場の雰囲気を悪くしないのも管理者の大切な役割。
しかしそのバランスを取るのは至難の業。
その職場の個々の性格もあるため「薬局全体の知識の底上げ」のためと、頭ごなしに指導して職場の雰囲気を壊すのも良くない一方、薬の専門家として仕事をしている身であるならば「常に学ぶ姿勢を取ってもらいたい」のも本音。
この葛藤を抱えてしまうのも管理薬剤師の使命なのかもしれません。
特にあなたの様な責任感の強い薬剤師であるならば、より一層悩んでしまうのではないでしょうか。
管理薬剤師が平和主義である必要はない
いくら自分が管理者の立場だとしてもそれで職場の雰囲気が悪くなってしまうのであれば、「波風を立てずに自分のあるべき薬剤師を目指す事だけに集中すればいい」と思うかもしれませんがそれは絶対にいけません。
世の中には事なかれ主義で平和を重んじる事を良しとする一方で、職場全体のスキルは完全に放置する人もいます。
そしてその様な人が結果職場の信頼を得ている場合すらありますが、あなたはその様な管理薬剤師には絶対になってはいけません。
管理薬剤師は平和主義者でいる必要性は皆無です。
あなたが管理薬剤師として、そして一人の薬剤師として大切な事は
薬局として患者の健康を一番に考えることです。
なぜならそれが薬剤師として、そして薬局としての使命だからです。
また、いつどの薬剤師に担当されても安心して薬の事を任せられる、それを実現させるのが管理薬剤師としてのあなたの立場でもあるんです。
例えば患者目線で薬局を見た場合、どの薬剤師が知識が豊富、どの薬剤師が新人で知識がない、そんな事は患者から取ってみれば全く関係のない話しです。
大事な事は新人でもプロとしての知識を身に着けておき、患者のためになる薬剤師として貢献することです。
それに「管理薬剤師だから一番知識があればいい」と言うのは間違いで、その知識を全員で共有できてこそ本当に意味があるんです。
一人だけの知識が抜きんでている必要はありません。
そしてそのためにはあなたが平和主義を最優先するのではなく、薬局全体としての知識の底上げを最優先すべきなんです。
仮にあなたが「和気あいあいと薬局で楽しく仕事ができればそれでいい」と考えるのであれば問題ありません。しかしあなたの管理薬剤師としてのマネジメント力の成長はそこでストップしてしまいます。
薬局内での知識の共有の難しさ
しかしそう簡単に知識の共有をする事はできません。
勉強をする様に促すとしても結局は本人のやる気ですから、そこを強制させると言うのは単に批難させるだけの可能性が非常に高いです。
ですから何気ない会話などから薬に関する話しを多めにしたり、3分で読める程の資料を作ったり、おすすめの書籍を薦めたりしましょう。
「少しずつでも知識を身に付けて欲しい」程度のニュアンスが伝われば十分です。
中でもおすすめは良くある質問に対するQ&Aなどの「マニュアル作成」を行ってみてください。
それだけでも十分な知識の底上げになるでしょう。
ただその際にあなたが決して行っていけない事は、過度に資料を作って勉強する様に促したり勉強会への参加を義務付けたり肩に力が入り過ぎる事です。
あなたが勉強してもらおうと気合を入れて何かを行っても、それを相手が誠意を持って受け応えてくれるとは限りません。
そうなるとあなたへの精神的な影響も大きなものになってしまうでしょう。
また薬局内での勉強会の様なプライベートな時間を奪う事は極力避けた方が無難です。
大切な事はあなたが「変わって欲しいと一生懸命になっている姿を見せること」そして「知識を共有するために何ができるかを必死で考えること」になります。これによりあなたも周りも確実に成長するはずです。
それでも他の薬剤師にやる気がない場合
もしあなたが出来るだけの努力を行っても他の薬剤師に変化がない可能性もあります。
その場合にあなたは絶対にこう考えるようにしてください。
自分の思い通りにならなくて当たり前だと。
あなたは自分の中でベストを尽くして薬局内のレベルの底上げを行おうと考えており、それを行動に移しました。
しかしそれに対して周りがどう思うかは周り次第であり、あなたの努力の分だけ期待に応えてくれる可能性は決して高くないからです。
なぜならあなたより年齢が上で薬剤師経験もあり知識がない人が、これから劇的に変わる可能性はほぼゼロに等しいからです。
人の気持ちを変える程難しいものはありませんので、大切な事は「勉強してもらう」事ではなく「最低限のマニュアルを身に着けてもらう」と言ったニュアンスで、知識の共有を図った方がいいでしょう。
そうする事で最低限の薬局内の知識の底上げは可能になります。
「1を聞いて10を知る」ではなく「1を完璧に理解してもらう」程度の気楽さでいきましょう。
他のやる気のない薬剤師に対してあなたが疲弊してしまっては本末転倒です。
管理薬剤師としてのあなたの成長
あなたはこれまで患者のため、ひいては自分の為に自己研鑽を続けてきました。
しかし管理者という立場を任されたこの機会をきっかけに、自分だけではない薬局のために知識を共有する方法を身につけましょう。
もちろん本当は薬の専門家であるならば個々の薬剤師が各自で学んで然るべき事ですが、現状を考えれば仕方がない場合もあります。
それにこの経験は必ず今後のあなたにとってプラスになる経験です。
もちろん最初が最も大変です。
年上の薬剤師もいる可能性が大ですが、それを攻略できれば怖いものはありません。
ですから肩に力を入れ過ぎずに挑戦してみましょう。その結果薬局の知識の底上げが患者へ還元されるものになれば、管理薬剤師としてこれ以上の喜びはありません。