新型コロナに関する慰労金において調剤薬局が対象外である報道がされました。
個人的には
全く本質を理解してない人もいるのでどうして薬局に慰労金が出ない事が問題なのかと説明すると「薬局が慰労金の支給にふさわしいか否か」は大した問題ではない。問題はそこではなく、全ての医療機関や非医療従事者にも慰労金が出るのに薬局には1円も出さない政治判断が行われた事が問題なんだよ。
— 怒れる薬剤師 (@nextpharmacist) June 9, 2020
とツイートして
・調剤薬局が慰労金にふさわしいか否かが問題ではない
・政治的判断で薬局に対する政治的判断が問題
この2つを主張しましたが、あまり伝わっていないみたいなので改めて解説したいと思います。
まず「調剤薬局がが慰労金にふさわしいか否か」ですが、これを判断するのって実は結構難しい問題だと思います。現時点では
①:コロナ受け入れ可(受け入れあり)20万円
②:コロナ受け入れ可(対応なし)10万円
③:①②以外5万円
となっていますが、個人的な感覚だと①の20万円は問題ないと思います。
②も受け入れ体制が整っていたため状況次第では相当のリスクがあったわけなので個人的には問題ないと思います。あくまでも個人的な意見です。
では③ですが今回のコロナ禍によって外来患者が減るなどの影響を受けて中にはボーナスカットや減給を受ける医療機関もあるそうです。
もちろんコロナ患者の受け入れ体制がないからと言って結果としてコロナ患者を診察しない可能性もゼロではなく、医療従事者と言うだけで心ない批判を受けた事もニュースになりましたよね。
感染が発覚したら外来を閉める事にまでに至るケースもあった上で通常の診療を行っていたわけなので、いくらコロナ患者の受け入れができないとしても相当のリスクは負っているわけです。
ですから慰労の意味では③が妥当であると言う意見も納得です。もちろんその対象をどこまで広げるのかと言う問題はありますけどね。
ではここで医療従事者の数を見ていきたいと思います。
直近のデータで届けてを行っている医師は約30万人、歯科医師約10万人、薬剤師は約23万人、看護師約166万人です。そしてこれにPT・OTや管理栄養士等の他のコメディカルを含めてざっくり見積もって医療従事者と呼ばれる人は200~250万人くらいでしょうか。
すると慰労金対象者が310万人である事を見ると医療従事者はほぼ網羅する人数が対象となっています。もちろんこの中に薬剤師は含まれていませんが。
今回有限の予算内で慰労金の対象においてどれだけの人数が想定され、そこにいくら支給すれば予算内に収まるのか様々な計算がされたと思います。そしてできるだけ公平に批難が出ないように予算の振り分けを考えたはずです。
そしてどうして今回調剤薬局が慰労金の対象外になったことが問題かと言えば「医療従事者に対する慰労金」としながら医療従事者はほぼカバーする人数を予算に組み込み、非医療従事者にも対象にも広げているにも関わらず、調剤薬局は慰労金の対象外とするどう考えても調剤薬局業界から批難が来るだろうことを想定している上で薬局は対象外でもいいと政治判断されたことが問題なんです。
もし仮に自分が予算を考える立場ならば医療機関においては手広くカバーしている一方で調剤薬局は一律対象ゼロなんて絶対にしません。それは「薬局も頑張っていたから」とかではなく非医療従事者にも対象を広げて全ての医療機関にまで広げているのに、調剤薬局をゼロとしてしまうと調剤薬局業界から批難されるのは明白だからです。
そんな角が立つことをして批判が来るならば初めから一部だけでも給付対象とします。例えば「0410対応を行った薬局薬剤師だけ慰労金対象」と言った一応支給の対象をすることを考えると思うんです。
しかし今回これを無視して調剤薬局は一律対象外とする事が検討されています。これは調剤薬局業界を敵に回しても問題ないと言う政治判断です。あるいはここまでやっても調剤薬局業界から批難は出てこないと腹をくくっているのかもしれません。
今回薬局をよく知らない人が「薬局は苦労していないから慰労金は必要ないだろ」と言っている人もいますが、個人的にはそう言った意見があっても良いと思います。
ただ問題なのが薬剤師の中でも「薬局は不要。もっと頑張っている人を支援して欲しい」なんてきれいごとを言っている人がいることです。木だけを見て森が全く見えていない、本質からずれている意見としか言えません。
そもそも薬局薬剤師の中でも自分の手元に5万円入らないから怒り狂っている人は多分いませんよね。この繰り返される不遇に怒り心頭しているからだと思います。
そしてこれは慰労金の話しだけではなく、これまでもずっとこの問題は起きてきました。
例えば圧倒的に世論の支持を得ても薬剤師の知識不足などを理由に一向に市販化に向かわない経口避妊薬の問題。
院外は院内の3倍のコストがかかる等の中医協における過度な薬局批判。
これ以外にも議論にもならないリフィル処方箋、スイッチ化しないOTC医薬品、数々の加算に付く「医師の指示の下」と言う文言等々。
これら全て本質としてはコロナ慰労金の薬局外しと同じ問題なんです。
いつまでも薬局・薬剤師は反論しないし、何なら診療報酬改定に関わる中医協でもサンドバッグなんだから薬局の言う事は気にしなくていいと烙印を押されているようなものです。
今回のこの件に対して立憲民主党の枝野代表がこう答弁しています。
「今の基準だと院内薬局の薬剤師さんは対象になるかもしれないけど院外処方箋薬局の薬剤師さんはどうなるんだって話しなわけですよ。一緒じゃないですか患者さんと接触するのは。そういったことについてはぜひ柔軟に対処していただきたい
~中略~
ご自身、そしてそこを通じて家族の感染の不安を抱えながらもまさにそこの仕事は欠かせないと、仕事を休んでしまったら困る人達が沢山出るということで濃厚接触は避けられない業種であるので頑張ってやってこられた。同じ金額にしろとまではいいませんよ、でも一定の配慮をしないといけないんじゃないかと」
立民はコロナ禍で色々問題がありましたが、この枝野さん答弁は薬局を代弁していると思います。