コラム

【偏差値55以下】6年間で薬剤師になるための薬学部の選び方

 

現在私立薬学部の数は約60校にも上りさらに増加を続けています。ここまで増えてしまうと良い大学・悪い大学があります。

大学の良し悪しを何をもって判断するかは難しい所ではありますが1つだけ確かな事は薬剤師国家試験に合格できる学生が極端に少ない大学は決して良い大学とは言えません

 

そして増えすぎた薬学部ゆえの弊害として薬剤師国家試験に合格できない学生、受験すらできない学生を量産している大学も散見されます。自己責任と言えばそれまでですが、決して少なくない額を投資して結果的に薬剤師になれなければ時間とお金を無駄にするだけです。

 

そこでここではこれから薬学部を目指す学生にとって避けるべき薬学部、そして偏差値が55以下でも比較的推奨できる薬学部を紹介していきたいと思いますのでぜひ参考にしてみてください。

 

私立薬学部の6年間で薬剤師になれる割合は約6割

これまで公表されていた薬剤師国家試験合格率が全く意味がない事が2021年に明らかにされました。

その理由は厚生労働省が「6年間で薬剤師国家試験に合格したストレート合格率」を公表したためです。

 

実はこれまで一般的に公開されてきた合格率は言わば「みせかけの合格率」になります。

薬学部は国試に受かる以前に6年間で卒業し国家試験を受ける事が容易ではありません。進級のための試験や卒業するための卒業試験などをクリアした人しか国試を受ける事が出来ない仕組みになっています。

どうして国試を受けさせてくれないかと言うと、国試に受かる見込みがない学生を受験させると自分の大学の合格率が下がってしまうからです。薬剤師国家試験の合格率が高ければそれがアピールポイントになるため「合格する人しか受けさせない」を徹底する大学も少なくありません。

 

しかし2021年に公表された6年間で合格したストレート合格率はその名の通り、薬学部に入学して留年もせず卒業し国試も合格した「6年間でストレートで薬剤師になれた人の割合」を出したものになります。

もちろんこれは完全に厳密な人数を追ったわけではありませんが「新卒合格率100%」と謳っていた薬学部も、実は6年間で薬剤師になれたのがたった3割である等の事実が明白になってしまったんです。

薬学部ストレート合格率

第106回薬剤師国家試験について 厚労省

 

ちなみに私立大学では58%のストレート合格率なので6年間で薬剤師になれる人は6割程度と考えていいですが、当然偏差値の高い大学は合格率も高く、かたや偏差値50未満の大学だとストレート合格率は5割を切る大学が爆発的に増えています。

私立薬学部の人気や偏差値よりも大切なこと

ではこれから薬学部を目指す学生は何を基準に選べば良いのかについて紹介していきます。

繰り返しになりますがこれまで公表されていた薬学部の合格率は何の意味もなさないため注意してください。

薬学部を選ぶ時にストレート合格率が大切な理由

そもそもストレート合格率ですが、これがどれ程の意味があるのか紹介していきます。

 

まず2021年度の私立大学のストレート合格率は58%となっています。この数字を見て「高い」と思う人よりも「低い」と思う人の方が多いかと思いますが、この数字はギリギリの許容範囲になります。その理由を説明していきます。

※ここではキリがいいようにストレート合格率が60%として具体的な数字を考えていきます。

 

例えば薬学部に入学した学生が200人いるとします。

この時にストレート合格率が60%ならば120人が6年間で薬剤師になれた事になります。

逆に80人が何らかの理由で脱落したわけですがこれは結構現実的な数字になります。

 

と言うのも合格者が120人いるという事は受験した人の80%が合格したとすると150人は受験できた計算になります。

200人入学⇒150人が国試受験⇒国試を受けた人の80%が合格⇒120人が薬剤師

この場合、合格した人は120人しかいませんが受験できた学生は150人になります。すると受験できなかった人は6年間で50人ですから年間8人程度が脱落する計算です。

この数字は他の学部と比較すると「多すぎる数字」かもしれませんが、簡単に進級・卒業できない事が自明の理とされている薬学部ならば驚愕するような数字でなく、かなり現実的な数字だと思います。

結果的に「入学者の75%がとりあえず薬剤師国家試験の受験はできる大学」となるとギリギリ許容範囲内の大学ではないでしょうか。

「いやいや受験しても落ちたら意味ないよ」と思う人もいるかもしれませんが、薬学部に関して言えばこの薬剤師国家試験に受験できるとできないとでは雲泥の差が生じてしまいます。

 

と言うのも6年間で受験できなかった人は最低でも1年間は大学に在籍しないといけないため学費がプラス1年分です。つまりプラス200万円です。おまけに来年受験できるとは限りませんし生活費もかかります。

 

一方卒業の切符は手に入った人は大学の学費は不要です。もちろん予備校代はかかってしまいますが、1年間で200万円もかかる予備校はありませんから金銭面でもメリットがあります。おまけに絶対に翌年受験できます。

それに国試に落ちはしたものの受験した人の80%が合格する大学を6年間で卒業できる様な学生は1年間予備校に通えばおそらくかなりの確率で翌年国試に合格します。また本番に慣れる意味でも国試を受験する事は大きな意味があるため、薬学部においては受験できるとできないとでは金銭面、そして翌年の合格にまで影響を与える大きな問題になってくるのです。

 

ストレート合格率が50%を切ると一気に厳しくなる

ストレート合格率が60%と言うのは決して異常とは言えない数字と言うのはわかっていただけたかと思いますが、これが50%になってくると話は違ってきます。

ストレート合格率が50%で上の数字に当てはめて考えてみます。

200人入学⇒125人が国試受験⇒国試を受けた人の80%が合格⇒100人が薬剤師

これだと受験できた学生は125人。

つまり「62.5%しか国家試験の受験できない大学」となってしまいます。先ほどの75%とは違い62.5%だとかなり厳しいと言えざるを得ません。

これらを考慮するともちろん合格するのが目標ではあるのですが、受験できる切符を手に入れておくことは最低限の目標とする必要があると言えるでしょう。

ちなみにこのストレート合格率は偏差値の高さにある程度比例しますが、完全に比例関係にないため注意が必要になります。

 

選んではいけない私立薬学部の4つの条件

薬学部を選ぶ際には「自分の今の偏差値」「住んでいる地域」等の要素も影響しているため基本的に「選ぶべき大学」よりも「避けるべき薬学部」を考慮する必要があります。

ではその「避けるべき薬学部」の条件は以下の4つです。

①ストレート合格率が低い(60%以下)
②みせかけの合格率が高すぎる
③定員割れを起こしている
④学費で選ばない

 

●ストレート合格率が低い(60%以下)

まずストレート合格率が低い大学ですがこちらは上で述べた通り最低でも60%は欲しい所になりますので最低条件とします。偏差値が高くてもストレート合格率が低い大学もあるためこのような大学も避けてください。

 

●みせかけの合格率が高すぎる

ストレート合格率が低い大学でみせかけの合格率が高い大学は要は「見栄っ張りの大学」になります。つまり見栄(合格率)を張るためには犠牲は付き物と考える大学です。その結果、本来ならば受かっていたかもしれない学生も受験させてもらえない可能性すらある大学です。ストレート合格率とみせかけの合格率との乖離が著しい大学は特に要注意と言えるでしょう。

 

●定員割れを起こしている

定員割れは隠しようのない大学の通知表です。

人気がない⇒学力のある学生が入学しない⇒偏差値が下がる⇒倍率が下がる⇒定員割れを起こす⇒人気がない

この負のループに入ってしまいます。定員割れの大学も現在はネットで見る事ができますのでぜひ参考にしてみてください。

薬大定員割れ、5割に迫る~新設で入学増も厳しさ反映

 

●薬学部の学費の安さは合格率に関係ない

薬学部は年間約200万円の学費になりますので、学費が少しでも安い大学を選ぼうとする保護者の方の気持ちもよくわかります。しかし薬学部は国家試験の合格率と学費の安さは比例しません。

例えば現在学費が最も安いとされている奥羽大学ではストレート合格率は50%未満で偏差値もボーダーフリーで定員割れも起こしています。

それに仮に10数万円学費が安かったとしても1年留年したらマイナス200万円なので即マイナスです。ですから学費は1円でも安い所を選ぶよりは6年間で薬剤師になれる大学を選ぶ必要があります。

 

薬学部には現在多くの大学で特待生の様な形で成績が優秀な学生は学費等が免除されるシステムがあります。しかしそれに該当する学生はほんの一握りなので大半の学生は通常の学費と考えましょう。

 

偏差値55以下におすすめの私立薬学部

ではこれらを踏まえた上で具体的に偏差値が55以下でも6年間で薬剤師になれる、あるいは6年間で卒業できる見込みの高い薬学部を紹介します。

中部地方なら愛知県の金城学院大学薬学部

金城学院大学
愛知県名古屋市

愛知県名古屋市には金城学院大学と名城大学の私立薬学部があり、名城大学は新卒合格率が100%に近くストレート合格率も65%となります。しかし名城大学は偏差値が少し高めで50台後半になります。ただ名城大学と金城学院大学のストレート合格率はほぼ同じなので、もし名城大学に合格する学力があるならば名城大学を受け、学力が少し及ぼないと思う人は金城学院大学を目指しましょう。ただし金城学院大学は女性しか入学できません。

九州地方なら熊本県の崇城大学薬学部

崇城大学
熊本県熊本市

九州の私立薬学部は福岡大学とその他の大学の偏差値の開きが多いため、中々選択が難しいのですが、中間層の受け皿として熊本県にある崇城大学が挙げられます。偏差値は決して高くありませんがストレート合格率は65~70%になりますので九州内での進学を考えている人にはぜひ目指したい大学になります。

近畿地方なら摂南大学か鈴鹿医療科学大学の薬学部

摂南大学
大阪府寝屋川市

大阪府をはじめ、近畿地方は薬学部が多い都市ですが偏差値と合格率のバランスがとっても良いのが摂南大学です。摂南大学はストレート合格率こそ65~70%になりますが新卒合格率との開きが少なく、6年間で薬学部を卒業して受験をすると考えるとかなり優秀な大学になります。近畿地方は選択肢が多いですが学力的に高い所が目指せないという人で6年間での卒業を考える人にはおすすめです。

鈴鹿医療科学大学
三重県鈴鹿市

鈴鹿医療科学大学は摂南大学に次いで、偏差値の割にストレート合格率が高い大学になります。今回おすすめする大学の中では最もストレート合格率は低いですが、それでもストレート合格率が60%になりますので大学の多い近畿地方ではギリギリ目指したい大学になります。

関東地方ならば国際医療福祉大学薬学部

国際医療福祉大学
栃木県大田原市

ストレート合格率を考慮すると最も偏差値が低い大学です。その分コスパが良いという事になります。場所が栃木県となりますので関東圏はもちろん、あまり選択肢のない東北地方の学生も視野に入れて良い大学だと思います。また学費が他の大学と比較して1割程安く160万円台なのも魅力の1つです。

女性で薬剤師を目指すなら安田女子大学薬学部

安田女子大学
広島県広島市

ストレート合格率が60%を超えている中で最も新卒合格率との開きが少ない大学になります。いわば「最も見栄を張らない大学」と言えるでしょう。女子大なので当然ながら男性は入学する事ができませんが、6年間で卒業を目指す人で中国地方の女子学生は選択肢にあってもいいと思います。

 

浪人して偏差値の高い薬学部を目指すのもアリ

現時点で偏差値が50位の人が1年間本気で努力すれば偏差値を50台後半に上げる事はそこまで難しい話ではありません。

下手にどこでも良いからと薬学部に進学してしまい、偏差値50の大学に入ると6年間で国家試験を受験できる確率はよくて5割です。基本的に1年間は留年、もしくは卒業延期を食らいます。かたや偏差値が60近くなると大学の選択肢もかなり増えストレート合格率も跳ね上がります。

浪人に抵抗がある人もいるかと思いますが、結果的に薬剤師になる事がゴールなのであれば1年間必死で勉強する事は決して回り道ではありませんので「もしこのまま進学していいのか?」と考える人は浪人をぜひおすすめします。